岡山県寄附講座

救急総合診療医学講座

コラム

COLUMN

医師の志

| 森本 直樹

なぜ医師を志したのかと言えば、祖父と父が耳鼻科の医者をしていた影響が強かったと思います。医学部に入学。硬式テニス部に入学したようなものですが、卒業時にどの科を専攻するかは迷いました。“目の前で人が倒れて救えない医者では困る”と思い耳鼻科ではなく麻酔科に入局しました。

研修医2年目には、広島市民病院に麻酔科を新設するために総勢7人で出向しました。最初は、麻酔科の麻酔は準備が大変で今までとは違いすぎると強い抵抗を受けました。部長先生が自分たちのやり方を貫きながら、とにかく『その日に麻酔をかけた患者さんの所に、必ず帰る前に病棟へ様子を見に行こう』と言われ実行しました。すると病棟の看護師たちから、次第に手術室、病院全体で信頼を勝ち得ることができました。この経験は、今でも診療生活に生きている様に思います。

医師になって20年目に、麻酔科の4人の仲間で津山中央病院に救命救急センターを新設する様に命じられました。病院の医師たちと協力しながら救急医療の充実に頑張りました。津山、美作、真庭など岡山県北部から重症患者さんが多く来院し、目が回る様な忙しさになりました。この状況をいつまでも続けるのは無理があると、研修指定病院の指定を受け、研修医に仲間になって貰う努力を始めました。認められると研修内容を救急中心にしました。初年度から5人の研修医が救急医療を熱心に学んでくれました。救急医療が1次から3次まで勉強できると評判になり、臨床能力を上げたいと願う優秀な研修医が増え、救命救急センターは若い人たちで賑うようになりました。あともう一つ実行したのは、消防署に所属する救急救命士の育成です。その頃、救命士の処置の拡大が始まりました。特に印象的なことは、救急救命士が、病院の手術室で麻酔科の医師とともに30症例の患者さんに気管挿管を行う実習を県内で最初に始めたことです。100人以上の気管挿管認定救命士を誕生させました。そのせいもあり、救命救急センターと県北の消防との意思疎通が十分な体制が作れたと思っています。

総合医療センターに赴任して3年近くになります。ここでは、若い研修医が救急初療を学ぶ場ができたらと思っています。幸い、救急外来(ER)診療のエキスパートの家永先生がおられます。今、J1やJ2の若き医師達がマンツーマンの指導を受けています。彼らは非常に速い速度で臨床能力をあげています。私は、入院が必要な重症患者さんをHCUで管理するお手伝いをしています。できるだけ多くの救急患者さんが、無事に自宅や施設に帰ることができるように若い先生と一緒に努力していきたいと思っています。

  • 特任教授

    森本 直樹MORIMOTO NAOKI

    専門医・指導医

    日本救急医学会救急科専門医/日本集中治療医学会認定集中治療専門医/ICD制度協議会認定インフェクションコントロールドクター

    専門領域・得意分野

    集中治療/重症救急